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らくちんイタリア語会話 vol.45

- 11 giugno 2000 -

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今日の言葉: Gatta ci cova!
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今回は、イタリア政治・社会の、ここ10年の動きを振り返ってみたいと思います。

以下は、10年前のイタリア下院の勢力図です。

1.キリスト教民主党 DC; Democrazia Cristiana      234議席 ○連立与党
2.イタリア共産党  PCI; Partito Comunista Italiano    177議席 ◆左翼野党
3.イタリア社会党  PSI; Partito Socialista Italiano    94議席 ○連立与党
4.イタリア社会運動 MSI; Movimento Sociale Italiano   35議席 ▲右翼野党
5.イタリア共和党  PRI; Partito Repubblicano Italiano  21議席 ○連立与党
6.イタリア民主社会党 PSDI;Partito Socialista Democratico Italiano
                              17議席 ○連立与党
7.急進党      PR; Partito Radicale           13議席 ★野党
8.緑の党      VERDI; Lista Verdi            13議席 ■野党
9.イタリア自由党  PLI; Partito Liberale Italiano     11議席 ○連立与党
その他多数...

10年前のイタリア政界は、戦後万年与党のキリスト教民主党とその他の党による連立
内閣によって成り立っていました。そしてこのキリスト教民主党を支配していた人物
が、イタリア政界の大黒幕、Giulio Andreotti(ジュリオ アンドれオッティ)です。

このアンドレオッティ、その狡猾さ、ヨーダの様な風貌、日本で例えるならまさしく
竹下登といったところです。彼は戦後1947年にデ・ガスペリ内閣の官房長官に就任し
て以来、ほぼ一貫して政権の座に居座り続け、何度も首相の座に就いてきました。
ちょうど1990年当時も、彼が首相を務めていました。1992年に任期の終わる大統領
コッシーガに次ぐ次期大統領の座も、アンドレオッティが有力視されていました。
(実際は、もめにもめた末に、スカルファロが大統領に選出されましたが。)
イタリアの全ては、この人の手の中に握られていたと言ってもいいでしょう。
彼のこの言葉は、象徴的です。
「L'importante e` continuare a partecipare. 大事なのは参加し続けることだ」

また、1983年から1987年までイタリア社会党から出た初めての首相を務め「イタリア
第2の奇跡」と言われた経済復興を果たし、アンドレオッティと共にイタリア政界を
代表する人物であったのが、Bettino Craxi(ベッティーノ クらクスィ)です。

そして、戦後ほぼ一貫して与党から激しく叩かれ続けてきたのが、西欧最大の共産党
であった最左翼、イタリア共産党(現 左翼民主)でした。冷戦時代は、ソ連を牽制
するアメリカからの支援もあり、イタリア共産党は徹底的に封じ込められてきました。

また、イタリア社会運動は、党首フィーニに率いられた、いわゆるネオ・ファシスト
党と呼ばれる最右翼でした。ちなみに、ムッソリーニの孫娘でソフィア・ローレンを
叔母にもつアレッサンドラ・ムッソリーニは、1992年の総選挙で当選、現在も国民同
盟の議員です。またこの頃、ボッシのロンバルディア同盟(現 北部同盟)は、わずか
1議席しかありませんでした。

そして当時のイタリアは、欧州統合を控えながらも巨額の財政赤字を抱え、不況の
真っ只中にいたのでした。人々は雇用不安と社会不満を抱えていました。人々は、万
年与党のキリスト教民主党に絶望しながらも、他の選択肢を選べないでいたのです。

そんな時に起きたのが、イタリア共産党の変革でした。
1991年2月、当時の書記長オッケットは、共産党主流派を左翼民主党という改革政党へ
と変革させたのです。この辺がどこかの国の共産党とは違う彼等の優秀なところです。
そして、この年の終わりには、本家のソビエト連邦が崩壊したのです。

そしてイタリア社会にも、大きな変革が起こり始めました。
賄賂と汚職とマフィアの癒着に満ちた政界と財界を、一斉に取り締まる動きが活発化
し始めたのです。1992年に始まったミラノ地検のディ・ピエトロ検事の徹底した追求
ぶりは、イタリア国民の拍手喝采を浴びていました。多くの汚職政治家と財界人が次
々と摘発され、このままいったらイタリアの政財人は全員逮捕かという雰囲気でした。
当時優勝したACミランと、Tangentopoli(贈収賄都市)と呼ばれたミラノをかけて、
こんな冗談も新聞『Corriere della Sera』の一コマ漫画に書かれていました。
「Milano, capitale d'italia ミラノはイタリアの首都だ
 Primato delle reti    ゴール(ネット)の数で一番だ
 e delle retate       網(ネット)にかかった(汚職政財人の)数でも」

アンドレオッティの跡を継いで首相就任が濃厚だったクラクシも、汚職により断念、
その代わりに1992年、首相となったのがイタリア社会党のアマート(現首相)でした。
その後、クラクシは有罪判決を受け、チュニジアへ亡命、今年の1月に死亡しました。

そしてその一方で、悲しい事件もありました。マフィアの撲滅に積極的だった裁判官
ファルコーネが、妻と側近もろとも爆殺され、更にその跡を継いだボルセッリーノも
爆殺されたのです。しかし、イタリア国民はこの悲しみを怒りに変え、更に団結して
立ち上がりました。アマートはシチリアへ軍隊を派遣、徹底的にマフィアと戦う姿勢
を示しました。そして、ンドランゲタ(カラブリアの犯罪組織、誘拐に強い)の大ボ
ス逮捕、カモッラ(ナポリの犯罪組織、麻薬に強い)の大ボスも逮捕、そしてついに
1993年シチリアはコルレオーネのマフィアの大ボス中の大ボス、トト・リイナが、24
年間もの指名手配の末、逮捕されたのです。そしてこれにより、アンドレオッティの
マフィア癒着疑惑も明らかになってきたのです。
アンドレオッティの裁判は長く続き、1999年に下された最終判決ではしかし無罪とな
りました。この当りは、アンドレオッティの闇の底力と恐ろしさを感じてしまいます。

同時に、前々回に書いたように、1992年の総選挙では、現行政党が一斉に票を落し、
イタリア北部の独立とイタリア連邦制を主張するボッシの北部同盟が一気に躍進した
「Elezione di terremoto 地震の選挙」があり、ミラノだけを見れば、北部同盟は
キリスト教民主党を僅かに抑え第1党となったのです。
続く1994年の総選挙では、ベルルスコーニの立ち上げたフォルツァ・イタリアと、
フィーニがイタリア社会運動を廃し生まれ変わった国民同盟と、血気盛んなボッシの
北部同盟を中心とした中道右派連合「il Polo per la liberta` 自由のための機軸」
が勝利し、政権を奪取したのです。

こうして戦後長年の間第1党の座にあったキリスト教民主党は、イタリア人民党等に
分裂し縮小、その支配体制は終わりを遂げたのです。

そしてその後、オッケットから引き継いだダレーマの左翼民主党を中心とする中道
左派連合「l'Ulivo オリーブの木」も躍進、1996年の総選挙では中道左派連合が
勝利し、政権を奪取したのです。
こうして、その後イタリア政界は、中道右派連合と中道左派連合の2大勢力が争う
理想的な政治形態へと変革していったのでした。

以下は、現在のイタリア下院の勢力図です。

1.左翼民主  DS; Democratici di Sinistra   164議席 ◇中道左派与党
2.フォルツァ・イタリア FI; Forza Italia     110議席 ▲中道右派野党
3.国民同盟  AN; Alleanza Nazionale      91議席 ▲中道右派野党
4.イタリア人民党 PPI; Partito Popolare Italiano 57議席 ◇中道左派与党
5.北部同盟  LN; Lega Nord           46議席 ▼中道右派寄り
6.民主主義者 I Democratici             21議席 ◇中道左派与党
7.イタリア共産主義者党 PDCI; Partito dei Comunisti Italiani
                         20議席 ◇中道左派与党
8.欧州民主連合 UDEUR; Unione Democratici per l'Europa
                         20議席 ◇中道左派与党
9.緑の連合 VERDI; Federazione dei Verdi     15議席 ◇中道左派与党
10.再建共産党 PRC; Partito della Rifondazione comunista
                         14議席 ◇中道左派寄り
その他多数...

ここで今日の言葉、「Gatta ci cova! ガッタ チ コーヴァ!」です。

直訳は「そこにメス猫が潜んでいるぞ!」で、意味は「There is something fishy
going on、 何か裏があるぞ、怪しいぞ、C'e` un inganno sotto」となります。

イタリア人はその長い歴史の中で、権力への従い方と共に、常に政治を権力を疑い、
物事の「裏」に存在するものを見抜こうとするfurboさも養ってきたのでしょう。
汚職政治家、賄賂財界人を見逃さず、マフィアを、不正を、間違ったことを許さない
という、皆さんのイタリア人に抱く印象とはかけ離れた(?)、心あるイタリア人の
この言葉が、イタリア政治と社会を変革させてきたのです。

果たして、私たち日本人は、巨大権力があらゆる手段を使って展開する政権維持の為
の策略の「裏」を、見抜くことが出来ているでしょうか。

ちなみに、故小渕前首相の葬儀は、ご遺族の「葬儀は質素に」との希望とは裏腹に、
超大規模に行われました。イタリアからは、ダレーマ前首相が参列していました。

●語句
importante = important、大事な
continuare = continue、続ける
partecipare = participate、参加する
Tangentopoli = 「tangente 分け前、リベート、賄賂」+「-poli 都市」。
        一連の贈収賄疑惑の総称としても用いられる。
capitale = capital、capital city、首都
primato = preminenza = preeminence、首位
rete = net、ネット、網、(サッカーの)ゴール
retato = netful、網打ち、(警察の)手入れ
elezione = election、選挙
terremoto = 「terra 大地」+「moto 運動」で、earthquake、地震。
polo = pole、極、機軸
liberta` = liberty、自由
ulivo = olivo = olive tree、オリーブの木。「oliva = olive、オリーブの実」
gatta = female cat、メス猫
covare = brood、(卵を、ひなを、気持ちを)抱く、育む、潜む、隠れている
inganno = fraud、詐欺、策略
sotto = under、下に

今の日本は、かつてのイタリアのように、政権の座に居座り続けることこそが最優先
の独裁政権に支配されていると言ってよいでしょう。歪んだ民主主義国家と言えます。
国民の意見が政治に反映されるためには、2大政党制が理想だと思います。もし与党
が悪い方向へ行けば、野党が政権を交代し民意を反映した政治を行なう、常に競い合
い、常に改善し合い、互いに成長していくことが必要だと思います。

そしてそのためには、この総選挙で民主党を中心とした政権樹立が必要だと思います。

「民主党はなんとなく頼りないから、やっぱ自民党に入れとこう」とばかり言って
いては、この日本の泥沼はいつまでも続くことになってしまいます。民主党の政策
に100%賛成なわけではありませんが、政権を任せてみるだけの価値はあると思いま
す。「よく分かんないから適当に入れとこう」でもいけません。政権交代が可能な、
野党第一党に集中して投票してこそ、より安定した新政権が誕生するのです。私は
今まで自由党に投票してきましたが、今回はより確実で安定した政権交代を祈って、
民主党に投票しようと思っています。

日本をよく知るイタリア人の友人はこう言っていました。「日本人の多くは、『投票
に行ったって non cambia niente...何も変わらないよ』と言う。何故なんだ?」

イタリア人は、投票が政治を変えることを知っています。1992年の総選挙も、1994年
の総選挙も、1996年の総選挙も、投票によってイタリア政治が変わってきたのです。
ちなみに、それぞれの投票率は、86.8%、85.8%、82.3%でした。

彼等だって、皆が皆、各党の政策を熟知して投票しているわけではないでしょう。
今の政治に満足だったら与党へ、不満だったら野党へ、好きな政治家がいたらその
党へ、というシンプルな考えで、投票している人も多いと思われます。
今回の日本の場合では、あの厚顔無恥の薄笑いを今後も見たかったら与党第一党へ、
そうでなかったら野党第一党へ投票すればよいだけのシンプルな判断も出来ます。

投票率が5〜6割、今だに戦後独裁政権による政治が続いており、「il premier
senza qualita`」が堂々と居座り、そしてその党が今だに一番人気の国、日本。
この悪循環から日本を解放する事が出来るのは、私たち日本人の投票です。


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